Heliumとsoracomを比較してみた

Helium Japan渡辺亮平です。

日本には「ソラコム」というIoTデバイスを少額で導入できるサービスがあります。

しかもソラコムはKDDI傘下ですから、強力なKDDIの通信網の上で商売をしているわけです。

これはヘリウムが広めようとしているIoTと、きわめて競合しています。

「果たしてヘリウムに勝ち目はあるのか・・・?」

疑問に思ったので、比較してみました。

インフラ利用時の費用を比較した

もっとも気になるのが利用時の費用です。

IoTを導入したい企業として、日々の費用は無視できません。

試算してみたところ、Heliumの圧勝でした。

  • Heliumは初期費用が0ドル月額が0.6ドル
  • soracom(LTEプラン)は初期費用が516ドル、月額183.778ドル
  • soracom(非LTEプラン)は初期費用が513ドル、月額183.58ドル
試算の前提条件

利用デバイス数は100台とする

デバイス1台あたり1分間に24byte送信(1日に33.75KByte、100台で1日3.375Mbyte)
soracomは主力製品であるSORACOM IoT SIM plan01sを100枚利用する

初期費用はSIM100枚で508ドル(送料込)
1枚0.06USD/日(100枚6USD/日)

LTE非対応エリアは0.2USD/MiB+5USD+0.06USD/日
LTE対応エリアは0.02USD/MiB+8USD+0.06USD/日+1.8USD/月

もちろんこれ以外にも機器の調達費用はどちらも掛かります。

いずれにしても初期費用、月額費用ともにヘリウムに圧倒的な価格優位性ありという結果となりました。

これもHeliumが非セルラー系なのに対し、ソラコムがセルラー系であること・HeliumにはPoC(プルーフオブカバレージ)を採用しているなど、さまざまな理由があると思います。

外部リンク:
LPWAとは何か? 「LoRa」「NB-IoT」「SIGFOX」を比較、いったい何が違うのか

LPWAとは? IoT時代の無線技術について知ろう!!
※セルラーと非セルラーの違いが分かります

※計算違いなどあればご指摘ください

その他の比較をしてみた

大小さまざまな比較をしてみました

利用ネットワーク

Heliumは独自網(9/1現在世界8000spot)
soracomはKDDI網、NTTdocomo網(国内外に無数のspot)

通信規格

HeliumはRoLa
soracomは3G/LTE、RoLa、Sigfox

資本金

Helium(PrimeGate)は不明
soracomは37億円

創業

Heliumは2013年
soracomは2014年11月(法人番号9011001102783)※KDDIは15年以上のIoT/M2M提供実績あり

利用実績

Heliumはセールスフォース、ネスレ、LIMEなど
soracomは伊藤忠、ダイドー、ダイハツ、日立、コマツ、ニチガス(ガスメーター)、クックパッド、ソースネクスト(ポケトーク)など

※当然ながらsoracomは日本を主戦場とする企業が多い一方、Heiumは世界展開を行う企業が多い

利用者数

Heliumは不明
soracomは1万5000顧客、122カ国(2019年時点)200万回線以上(2020年6月時点)

管理者

Heliumは非中央集権型
soracomは中央集権型

2020/9/1時点の24時間取引高

Heliumは6500万円(取引所)
soracomは不明(なし?)

RoLa規格端末の販売価格

Heliumは57000円
soracomは77000円(AL-020)

ツイッターのフォロワー数

Heliumは7000
soracomは6600

機器設置のインセンティブ

Heliumは設置者に利益あり
soracomはKDDIに利益あり

いかがでしょう、参考になったでしょうか。

考察

ヘリウムは食い込む余地が大きい

わたしはそう思いましたが、皆さんはいかがですか?

たしかにKDDIは日本の隅々まで電波塔を立てました。

今からこのインフラをひっくり返すのはとても難しいでしょう。

ですがヘリウムには現状、ホットスポット端末を設置する側のメリットがあまりにも大きいです。

メリットが大きいほう・恩恵が大きいほうに人は一気に傾くのが、世の常です。

たとえば日本には「出前」という文化が長年根付いていました。それにもかかわらず、2016年ウーバーイーツの上陸によって、「出前業界」は一瞬で外資にシェアを奪われました。

まさに幕末にあった「黒船来航」です。

なんならIoTを導入したい企業はホットスポット端末を入れて、利益を出しながら企業運営をしちゃうかもしれません。その際は日本人の営業部隊、技術チームも必要になってくるとは思いますけれども。

それに、別にこういうシェア争いは「どちらかが死ぬまで続く」なんてことはありません。日立と東芝が家電競争をしたように、アップルのiPodとソニーのウォークマンが競ったように、健全な競争が生まれます。

ヘリウムのシェアが上がってからでは遅い

「機器が普及したら、私も参入しようかな」という判断でもまったく構いません。

ただしその場合はアーリーアダプター層ではなく、アーリーマジョリティか、レイトマジョリティ層になることを理解しましょう。

アーリーアダプター・イノベーター理論とは?

つまり、後で参加すればするほど「インフラを提供する側」のメリットが失われている可能性が高い、ということです。

現在の収益の1/10や1/100になっている可能性は十分ありえます。

それでも日本では銀行預金の金利よりも高い報酬が受け取れるので、みんなこぞって設置することもあると思います。

「新しいことを避ける」「利益が出ると判明した時点で参入する」確かにこれもひとつの選択です。

しかし、周りの様子を伺えば伺うほど参入時期は遅くなり、報酬の旨味が減ります。

特に投資において「みんながやっているから自分もやる」という判断がもっとも愚かなことは、経験者ならご理解いただけるはずです。